キリエ
3年前、リアルミーは、漫画家になることを夢見るキリエ姉妹こと、奈央さんと知代さんにインタビューをしました。そして今回はなんと、プロの漫画家として人生の新たな一歩を踏み出したキリエ姉妹にまたインタビューできることをリアルミーは本当に誇らしく思います。今回、キリエ姉妹には、プロの漫画家としての新たな人生、前後編作品である「ブラザーバディ」について、また、2014年のインタビュー以来、どんな気持ちだったか、どんな経験をしてきたのかについて伺いました。

またインタビューができてとても嬉しいです! 最後にお会いした時から、本当に色々なことがありましたね。2人はプロの漫画家になられたんですから!2人とも、心からおめでとうございます!どのようにしてプロの漫画家になったか教えて頂けますか?

2014年に第74回小学館新人コミック大賞青年部門で大賞を受賞し、同年8月に週刊スピリッツにデビュー作「ヒトリシズカ」が掲載されました。小学館新人コミック大賞のサイトで受賞作をご覧になれますので、読んでもらえたらとても嬉しいです!


2人の前後編作品「ブラザーバディ」について教えてください。

職業潜水士の兄弟の物語です。天才ダイバーの兄、霊が視える弟が水辺の霊を助けます。「きょうだいでバディ」という設定が姉妹で漫画家をしている自分たちと重なるので、お互いへの気持ちや心境、個々の役割についてじっくり話し合い、心理描写を大切にしました。この作品を描くにあたり、沖縄の職業潜水士の方に取材させて頂きました。

職業潜水士は水中で行う作業全般を請け負う潜水士で、その仕事は水中建造物(橋など)の設置や、沈没船の引き揚げ、海洋調査など多岐に渡ります。水中作業の過酷さと他分野に渡る技術力に衝撃を受けました。まだまだ描きたいことがあるので、ぜひいつか続編を出したいです。

初めてご自身のマンガが印刷されて店頭に並び、とても多くの人が自分たちのマンガを読んでいると知った時はどのようなお気持ちでしたか?

デビュー作が掲載された漫画雑誌を、発売日の朝父がコンビニで買ってきてくれたので、二人で仕事部屋に籠って読みました。「この部屋の床に散らばっていた原稿が本になって全国の書店やコンビニに並んでるなんて信じられないね」「読んでくれる人ほんとにいるのかな」などと話したのを覚えています。現実味が全くありませんでしたが、その夜「ヒトリシズカを読んで涙した」というネットの書き込みを見て、涙が出るほど嬉しかったです。

プロの漫画家としての生活・仕事は想像していた通りでしたか?何か違いはありましたか?

キリエは姉妹漫画家ですが、姉と妹の役割分担は明確ではありません。『スピリッツ』作品は基本的に妹がメインで作っていて、姉が作画のアシスタントや、ネーム(漫画のラフ、セリフやコマ割り)の修正、編集者との打ち合わせなどを担っていますが、この先役割分担はより多様になっていくと思います。私たちはいろいろなジャンルの作品に挑戦したいと思っているので、その都度互いの強みや得意分野を存分に活かしていきたいと考えています。作品ごとに方向性やそれぞれの役割を決めていきますが、真面目に話し合うことはほとんどありません。子供の頃から一緒に物語を作っていたので、仕事になっても二人で漫画のキャラクターたちと遊んでいるような感覚です。漫画が仕事という感覚は極めて薄いのですが、生活は多少変わりました。デビュー前、大学時代の恩師から「プロの生活をリアルに想像してその生活ができたら、プロになれる。プロになったらプロの生活をするのではなく、プロの生活をすればプロになれる」という言葉を頂きました。それから私たちはできる限りプロの生活を心がけてきました。例えば作品には必ず締切を設け、それが連載を持った場合でも実現可能かどうかシュミレーションし、朝起きる時間、原稿を作る時間、打ち合わせの時間などリアルに実行していました。でも実際プロになって、掲載を前提とした作品を作るとなると、想像していたよりはるかに時間がかかったので、もっと時間に厳しくしないといけないと思ってます。ご飯に行ったり、友達と遊ぶ時間もたくさん欲しいので!

プロになるまでの道のりで印象に残っていることは何ですか?一番困難だった事、マイナスな面は何ですか?

ネームを何度も描き直した経験です。自分たちが表現したいものと、それを読者の方に伝える難しさを痛感しました。とくに時代物は、キャラクターの置かれている状況や立ち位置、その基本的な心情を伝えるのが本当に難しい。現代とは常識や価値観など違うところがたくさんあるので。でも、時代や国を違えても変わらない普遍的なこともあると思います。2015年に週刊スピリッツに掲載された読み切り『大火の鶴』は江戸時代の大火事を描きましたが、東日本大震災にあわれた方々、そして復興のために一丸となる日本への応援メッセージを込めました。

最も大きな試練はまさに今です。「こういう作品が描きたい」と思うものと「こういう作品を描いて欲しい」と求められるものの違いに苦しんでいます。挑戦したいと強く思う作品があったのですが、そのジャンルでは私たちの個性が生きないと言われ、断念せざるおえませんでした。プロになってから一番悲しい出来事だったのですが、求めてくれる人がいるならその期待に応えることもプロとして大切だと思い、全力で頑張ることに決めました。その先で必ず「この作品が描けて良かった」と思えるものができると信じています。でも描きたい作品に挑戦する機会はこれから先もずっと追い求めます!


3年前のインタビューで、「もし、プロになったら、私たちの漫画で読者を幸せにする機会がもっと増えるんです」と言っていましたね。また、「食べ歩きのコメディー漫画も描いてみたい」と言っていました。それは今でも変わりませんか?

「人を幸せにすること」が私たちの人生の目標なので、デビュー前もこれから先もずっとその気持ちは変わりません。人を幸せにする手段は星の数ほどありますが、その中で私たちは「漫画」を選びました。漫画は私たちにとって、目標を達成するための「ツール」でしかないと思っています。なので、描きたいものや描くべきものは自ずと決まってきます。私たちの作品を読んで楽しい気持ちになったり、励まされたり、誰かの人生を少しでも良くするものでなければ描く意味はありません。切羽詰まると時々それを忘れてしまい、「企画が通ること」「雑誌に掲載されること」が最終目的に思えてしまうこともあるのですが、必ず真の目標に立ち戻るようにしています。

食べ歩きエッセイ漫画はいつか絶対やりたいです!私たち食べるのが大好きなので!!!デビューしてから二人とも太りました…。食べ歩き連載を始めたらもっと大変なことになりそうです。(笑)

お2人の次の目標は何でしょうか?キリエファンは何を楽しみにしたら良いでしょうか?(例えば、ファンの前に姿を現わす機会があるとか、近い将来、新しい漫画を発表することが決まってるとか)

キリエのファン … いたら嬉しい!!(笑)

次にやりたいことはたくさんあります。時代物やファンタジーにも挑戦したいですし、少年漫画や少女漫画も描きたいです。それから、母が作家なので、母の小説を原作にした漫画も描くつもりです。
今は週刊スピリッツで連載の準備をしています。間もなく連載開始です。救急救命士が主役のお話です。よろしくお願いします!!


3年前のインタビューでお話してくれたお2人の考えや、物事に対する見方で変化したものはありますか?(プロとしての成功や有名になったことでセルフコンフィデンスとセルフビリーブ=自信、に何か影響を与えましたか?)

基本的には変わっていないです。3年前のインタビューで、私たちは技術力よりセルフコンフィデンスとセルフビリーブの方が大切だと考えているとお話しました。デビューできたのは、自分たちの力を信じて描き続けることができたからだと思っています。「まず信じなければ何も成し遂げることはできない」というのは、信じずして継続することができないからだと思います。続けなければ技術力も上がらないので当然というか。

でも、デビューはスタートでしかありません。デビューから約2年が経ちますが、その間何度となく姉妹で互いを励まし合い、セルフコンフィデンスとセルフビリーブを高めてきました。恐らくこの先、何百回も自信を失いかけると思いますが、必ず取り戻せると思っています。それは互いを絶対的に信じているからです。自分の自信を失ったとしても、相手を信じる気持ちを失うことは絶対にありません。うまく言葉にできないので伝わるかどうか分からないのですが、相手を信じてるからこそ、相手が信じる自分を信じられる…ということなんです。

プロの漫画家になって、将来の夢や目標は新たにできましたか?5年後にはどうなっていたいですか?

先立つ目標は、連載を持ってその作品が多くの方に読まれることです。

5年後には、世のため人のために何か少しでも貢献できたと実感していたいです。私たちが作ったキャラクターにたくさん友達ができて、その友達がたくさん幸せなっていて欲しい。そして人を幸せにする漫画を描き続けると共に、それで得たもの(影響力や経済力など)で何か人の役に立ちたいです。ついでに月2回ホテルのディナーバイキングに行ったり、ルンバを買ったり、ディズニーランドの年間パスポートも手にしていたいです。


クリエイティブ業界(アートや執筆、演劇など)での成功を望んでいるけれども、実現するのは難しい、または一握りの人しか成功できないと思っている若い女性に何かアドバイスはありますか?

私たち自身もまだまだ新人で成功には程遠く、人にアドバイスできる立場ではないのですが、もし一つ言えるとしたら、作品が「選ばれる」ためには「強み」を見つけて目立たせることが必要だと考えているということです。漫画で言えば、セリフ、絵、キャラクターのデザイン性、リアリティー、情緒、雰囲気、話の巧みさやお笑いの要素、泣ける要素、ミステリー要素、ホラーの怖さ、専門性などなど「売り」になる要素はいくらでもあると思うのですが、作品を構成するすべての要素が75点とか80点の「よくできた作品」より、他の要素は41点でも(3点でもいい)ある一つの要素が200点の作品が選ばれるように思います。もちろん、より多くの要素を強化できるのが望ましいですし、「最低限、他の要素もこのレベルはないと…」ということもあるとは思いますが、どんな小さなことでもいいから「これだけは絶対に負けない」「これを自分の強みにしよう」と明確に定めて、徹底的に強化し作品の魅力にすると、どこか誰かにニーズがあるのではないかと思います。

でもそれより何より、大事なことがあります。それは『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげる先生がおっしゃっていたことです。

「描き続けていれば、なんとかなる」

本当に好きで続けていれば、きっといつかはなんとかなるんだと思います。

読者の皆さんに、他にアドバイスはありますか?何か付け加えたいコメントはありますか?

最後まで読んで下さって本当にありがとうございました!こんな風に自分たちの気持ちや考えを知って頂く機会をもらって心から感謝しています。リアルミーをご覧の方々が、夢を実現できることを心から願っています!!

キリエ、本当にありがとうございました。3年前に初めてお会いした時から、2人がこれほど目標を達成したことを、とても嬉しく思いますし、とても感銘を受けました。これからも、お2人の挑戦を追い、そしてサポートするのを楽しみにしています。夢の実現、本当におめでとうございました!

  • ゆか

    ブラザーバディ読みました!潜水士という私には全く未知な世界のお話しでした。画力、ストーリーの構成が素晴らしかった!話の展開が面白くって、続きが気になる!っとなりながら後編が出るのを我慢しました。特に最後が…とってもよかったです!!読み手を楽しませてくれるストーリーで、次回作、楽しみにしています。

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