三橋那津子
今回のリアルミーは、イギリスで通訳訓練を受け現在は東京在住のフリーランス通訳者、三橋那津子さんとお会いし、素晴らしい時間を過ごしました。通訳になるまでの道のりや、今までの人生で経験してきた困難や楽しかったことについて、さらに日本の同年代の女性が直面しているプレッシャーに関して、そして彼女自身の目指す将来についてお伺いしました。

あなたにとっての本当の私、リアルミーはどんな人ですか?

三橋那津子、26歳。東京で通訳の仕事をしています。プライベートでは、美術館巡り、映画鑑賞、読書、そして友人と時間を過ごすことが好きです。映画や本は実話に基づいている話が特に好きで、ドキュメンタリーなどもよくみます。

性格はあまり外向的な方ではないと感じていて、どちらかと言えば内向的だと思います。大きなイベントやパーティーの場よりも、1対1や、小規模なグループで人と接することが好きで、近い距離で人と向き合うことの方が得意です。通訳の仕事では事前準備が非常に重要となるので、勉強には一生懸命取り組んでいます。そうった意味では勤勉なほうだと思います。ただ心配性な面もあって、何事に対してもとにかく心配してしまう傾向があります(笑)。ですが全体的にはポジティブな性格です。

現在はフリーランスの通訳としてお仕事をされているということですが、それについて少しお話頂けますか?

通訳の仕事では、あまり典型的な一日というものがありません。それがフリーランスとしてお仕事をする上でとても気に入っている面でもあります。企業内のミーティングやイベントなどで通訳をしたり、セミナーなどで通訳をしたりしています。仕事の案件は主に登録しているエージェントを通して頂いています。

あなた自身の将来の夢はなんですか?

6年後には東京オリンピックが開催されるので、オリンピック関連のお仕事することが将来の目標の一つです。より長期的な目標としては、国際会議なとの場で通訳をすることです。最終的なキャリアゴールはそこだと思います。

国連や世界経済フォーラムなどで通訳をすることが大きな夢なので、ヨーロッパやニューヨークでお仕事ができるようになれたらとても嬉しいです。

その目標と夢を初めて意識したのはいつ、そしてどのようにしてですか?また、それらを実現するために何をしていますか?

目標を達成するまでやめるつもりはありません。なので、それが目標の達成方法です(笑)。
夢や目標を本格的に意識し始めたのは、おそらく大学3年の頃だったと思います。大学3年で就職活動を控え、自分は企業で働きたいのか、それとも他の道に進 みたいのかを真剣に考える必要がありました。ですが企業で働くことには元々あまり興味がなく、それが通訳の道を選択した理由の一つです。もう一つの理由 は、自分自身の語学力に対するコンプレックスです。日本語も英語も、どちらもネイティブのレベルではなく、中途半端な状態だと感じていました。ですが通訳 では、その中途半端だと感じていたことをむしろ活かすことができます。

将来の目標について今のところ不安に感じていること、または曖昧ではっきりしないことは何かありますか?

目 標ではないのですが、将来的にどこに住みたいのか、一か所に落ち着きたいのかどうか、まだよく分かりません。東京は好きですが、一生住みたい街ではないと 感じています。ですが仕事上、しばらくは東京にいたほうが良いと考えているので、少し時間をかけて、次はどこに行きたいのか考えていきたいと思います。

ただ、一つの場所に縛られてしまうような状況になってしまうことは不安です。ですが不安よりも、将来どこに住むのか楽しみに感じている部分方が大きいです。

大学は慶応義塾大学総合政策学部(国際安全保障専攻)で学ばれたそうですが、それについても少しお話し頂けますか?

大 学はとても楽しかったです!私の所属していた総合政策学部は少し変わっていて、必須科目の少ない学部だったため、1年生の頃から本当に自由に好きな授業を 受けることができました。正確に言うと専攻もなかったため、ゼミが一般的な専攻に近いものだったのではないかと思います。
私は国際安全保障のゼミに所属し、国際テロリズム、具体的にはアルカイダについて研究していました。ゼミ以外では、ロシア語やマレーインドネシア語の基礎 クラス、脳科学、イスラムなど、様々な講義を受講しました。自由に様々な分野から新しい内容を学ぶことは本当に楽しかったです。

大学院では、イギリスのバース大学大学院で通訳翻訳を学ばれたそうですが、いかがでしたか?

大学院もとても楽しかったです。大学院があったバース自体がとても美しい街だったので、その環境にいれるだけでも幸せでした。また、一緒に勉強をしていたコースメイトの皆さんも通訳や翻訳に情熱を持っている方々ばかりだったので、とても刺激的でした。

在学中は基本的には勉強と通訳の練習に集中していましたが、とても楽しい大学院生活でした。友人と近くのパブにも行ったり、イギリス国内を旅行したり、スペインにも二回行くことができました。

イギリスのバース市
イギリスのバース市


海外での生活がどのようにご自身の仕事観、生活観を形作ったと思いますか?

7 歳から18歳までの間アメリカに住んでいたので、それらの経験が今の自分にも大きな影響を与えていると思います。11年間のアメリカ生活がなかったら、通 訳にもなっていなかったでしょう。ただ、海外生活で経験したことが現在の自分にどのような影響を与えているのか、具体的に答えるのは難しいですね。あまり にも自分の人格の大きな一部になっていると思うので。

7歳でアメリカに行き、新しい生活に慣れることは大変でしたか?

正 直、当時のことについてあまり覚えていません。おそらく大変だったのではないかと思います。最初通い始めた小学校にはうまく馴染めず、学校を変えたことは よく覚えています。ただ自分自身が大変だったというよりも、母にとても心配をかけたので、母のほうがつらかったのではないかと思います。ですが、最終的に は全てうまくいきました!

私には四歳年上の姉がいるのですが、私は幼かったこともあり、初めての海外生活を始めるにあたっては姉のほうが大変だった面も多かったと思います。

今までの人生において、ご自身の夢を叶えようとする中で、特に困難な時期などはありましたか?

大 学3年生の頃、日本の大半の学生と同様、就職活動を始めなければなりませんでした。私は集団的に一斉に何かを始めることや競うことが苦手なので、就活はと てもつらかったです。また、企業で働くことにも興味がなかったので、さらにつらかったです。一方で私の父は、私が大学卒業後すぐに企業で働くことを望んで いました。ですが私は、実は就活と同時進行で、大学院への出願も提出していました。要は、全く気持ちの入っていない状態で就活を行い、仕事を探しているふ りをしていたわけです。面接やセミナーにも行って、ちゃんと皆と同じリクルートスーツも着て(笑)。

父親や社会からのプレッシャーは感じていましたか?

は い、どちらからもプレッシャーは感じました。大学院に進むことに関して父は応援してくれると最初思っていました。教育を追求することを喜んでくれると思っ ていたので。ですが実際には、海外の大学院に進みたいことを告げると怒られました。そこで初めて、父は私にすぐに企業で働くことを望んでいるのだと理解し ました。自分自身の思い描く将来とは違っていたので、正直ショックでした。

大学院に進んだことに関して、父親とは和解できましたか?

和解した、というわけでもないですね(笑)。最終的には反対を押し切って大学院に行きました。ただ、良い成績で卒業したので、その点に関しては父も喜んでくれていたと思います。

そのような困難な状況に、どのように対処しましたか?

就 活の暗黒時代では(笑)、母がサポートしてくれたのでとても助かりました。私は頑固なので、就活を通して企業から内定をもらえたとしても、不満を感じてし まい数年で辞めてしまうだろうと当時から思っていました。なので自分自身にも「必ず修士号を取って通訳を目指す」と言い聞かせながら過ごしました。

これまでの人生において、一番誇らしかった時、もしくは励みになった時はどんな時ですか?

大学院を優等成績で卒業できたことは、父親にも自分の努力を証明できたので、とても嬉しかったです!

今までの人生において、特に困難な時期などはありましたか?そのような時はどのように対処しましたか?

社 会人経験が全くない状態からフルタイムの通訳として始めることは難しかったので、大学院卒業後は会社でも働きました。最初の会社は小さなスタートアップの 会社で、私を含めて社員は5人でした。とても楽しく良い会社で、色々な貴重な経験をさせてもらいました。次に転職した会社は、最初の会社に比べると保守的 な雰囲気の日系企業で、私はうまく馴染むことができませんでした。正直つらかったです。例えば、9時から6時の就業でほとんど何もすることが与えられない 日もありました。私は自分から積極的に何か仕事を探すことも好きなのですが、それさえ難しい状況でした。会社にいても、何も価値のあることを達成していな い気持ちが常にありました。また、オフィスがとても静かだったことにも馴染むことができませんでした。一日中オフィスにいても、「おはようございます」と 「お疲れ様です」の二言しか発せず帰宅するような日もありました。それもとてもつらかったです。結局その会社は半年で辞めてしまいました。

ただ、自分で状況を変える努力もせずに辞めてしまうのはいやだったので、上司を含む何人かの方に状況を相談しました。理解は示して下さいましたが、実際の状況は変わらなかったので、最終的には辞めることを決意しました。

6カ月間頑張りましたね!

両親は不満でしたけどね(笑)!その後、GAPジャパンで6カ月契約の派遣通訳ポジションに就きました。素晴らしい経験でした。

前進し続けるための原動力は何ですか?

仕事がうまくいくと、通訳をした相手の方やクライアントから「すごくわかりやすかったです。ありがとうございました」といったお言葉を頂けることがあります。そういった瞬間はとても嬉しいですし、自分が自分だからこそ誰かの役に立たてたことに喜びを感じます。

仕事以外の生活(プライベート)はどのような感じですか?
リラックスするために何をしますか?

とても残念な響きになってしまうのですが、大したライベートはないです(笑)。仕事後は帰宅し、次の案件の準備をします。家で勉強したり、友人とご飯を食べに行ったりしていることがほとんどです。なので、あまりエキサイティングなプライベートではないと思います(笑)。

ですが、美術館に行くことは大好きなので、できるだけ足を運ぶようにはしています!動物も大好きです!自分の家では今何も飼っていないのですが、実家には犬と猫がいます。子供の頃から動物と暮らしてきたので、今もできるだけ実家の犬と猫に会いに行くようにしています。

くーちゃん
くーちゃん
びーちゃん
びーちゃん


5年後の理想の自分自身と生活についてどのように想像されますか?

通訳は絶対に続けています。5年後ということは2019年になるので、オリンピック関連の仕事ができているといいですね。その後は具体的にどうなるかはわかりませんが、その時の人生の流れに任せたいと思います。

いずれ結婚もしたいと思っています。ただ、他にもやりたい事や達成したい事がある中で、結婚をどのようにそれらの中に組み込んでいけばいいのか、少し不透明です。オリンピック関連のお仕事ができるように、仕事にも引き続き集中していきたいので。

社会的にも、女性は特定の年齢までに結婚するべき、というプレッシャーはまだまだあります。日本の場合は30歳ですが、残念ながら女性達自身の間でも「30歳までに誰かを見つけなければ」という雰囲気はあると思います。

日本の若い女性は自身の私生活や家庭での生活、そして仕事の間で選択を迫られていると感じますか?

以 前に比べて状況は改善してきていると思いますが、やはり男性に比べて女性のほうが両立をしなければならない事柄が多いように感じます。その点ではあまり変 化がないかもしれません。私の周りには、自立心が強く、結婚後も仕事を続けたいと考えている友人が多いので、皆それを実現できるパートナーを見つけようと しています。ですが、私達のような選択の自由があるタイプはどちらかと言うと少数派で、まだ多くの女性は何らかの理由から仕事と結婚の両方を選ぶことはで きない状況にあるのではないかと思います。

この問題に対してどのように対処すれば良いでしょうか?

男 性と女性の両方が、お互いに様々な選択肢があることを認識し、それらを理解することが必要だと思います。男性は、女性にも色々な選択肢があることを認め、 女性本人が何を選ぼうとその決断を問題視するべきではありません。キャリアを選ぶことも良いですし、主婦になることも素晴らしいことだと思います。主婦も フルタイムの仕事です。重要なことは、男女問わず、お互いに様々な選択肢があり、それらを選ぶ権利があることをしっかり理解することだと思います。

日本には男女不平等があると思いますか?

あると思います。ただ、自分自身に対してはあまり感じたことはありません。会社員ではなく、通訳というある意味特殊なポジションにいるからかもしれません。
仕事で様々な会社にお伺いし、管理職レベルのミーティングなどに出席する機会があるのですが、特に日系企業では、多くの場合それらのミーティング参加者は 全員男性です。ただ、一度私が通訳をさせて頂いた日系企業でのミーティングでは、1人マーケティングのマネージャーで女性の方がいました。他の参加者は全 員男性で、年齢は50代~60代くらいだったでしょうか。うまく説明できないのですが、その女性の方がプレゼンを始めると、室内の雰囲気が明らかに変わり ました。彼女のプレゼン中、他の参加者から敵意のようなものを感じられました。そしてプレゼン後、1人の男性から質問があがりました。女性はストレートな 口調でその質問に答えたのですが、その口調に男性の数名が「わ、怖っ!」と言って、全員がクスクス笑い始めたんです。全体の雰囲気とその反応があまりにも 幼稚で、その場にいながら私自身まで具合が悪くなりそうでした。さすがに日常的に起こっていることではないと思いますが、このような状況を目の当たりにす ると非常に悔しい気持ちになります。

ご自身を含め、若い女性はどのようにこの不平等に対処すれば良いでしょうか?

先 ほどの答えと同じになってしまうのですが、やはり男女問わず、全員に選択肢があることを認めることが重要だと思います。女性達自身もこのことを充分理解す る必要があります。女性にも多くの選択肢があって、自分自身が幸せになるための最善の選択をする権利があります。最終的にはそのことに尽きると思います。 また、男女不平等の問題では職場に焦点が当たりがちですが、仕事という観点だけでなく、選択の自由と権利にも着目すべきだと思います。

男性は何ができると思いますか?

女 性と同様に、男性も自分達には様々な選択肢があることを認識することが重要だと思います。仕事を辞めて専業主夫として子育てすることを選択しても問題視さ れるべきではありません。なので、男性も女性も、今まで社会的に求められてきた役割に沿う必要はない、という点で共通していると思います。ただ同時に、個 人がそれらの様々な選択や決断をスムーズに実行できるよう、社会全体としても環境を整えていく必要があります。

リアルミーではいつも元気づけられる引用で終了しています。人生において特に好きで、読者のみなさんとシェアしたい引用または信条はありますか?

「速度を上げるばかりが、人生ではない。」
マハトマ・ガンジー

特 に東京に住んでいると、常に忙しくしていなければいけないように感じてしまい、他の人も互いの忙しさを競い合っているように見えてしまうことがあります。 そう感じてしまった時はこの言葉を思い出して、「常に忙しくしていなくてもいいんだ」「仕事以外の人生を楽しんでもいいんだ」と自分に言い聞かせるように しています。

若い日本女性に向けて、何かアドバイスはありますか?

周 りと違うことをするのを恐れる必要はないと思います。常に周りと一緒の行動をとる必要もないですし、何歳までに何かをしなければいけない、ということもあ りません。何もプレッシャーも感じるべきではないと思います。やりたいことが頭にあるのであれば、ぜひ挑戦してみて下さい。

三橋那津子